中野牧の野馬土手〜小金牧の残光

中野牧は小金牧のうち、現在の鎌ケ谷市初富、松戸市五香、六実を中心に柏市、白井市にまで広がっていた最大の牧です。野馬土手は鎌ケ谷市、松戸市、柏市、白井市に残っています。
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■初富の捕込 〜野馬追いの施設 東葛人のお薦め


 鎌ヶ谷市初富の捕込ですです。北総線北初富駅の近くにある野馬土手です。ただ、初富の捕込が他の野馬土手と違うのは、自由奔放に育ててきた馬を捕まえるための施設跡なのです。一カ所に追い込んで捕まえるため、土手が袋状の“込”になっています。

 今まで私有地なので勝手に入るわけにはいきませんでしたが、いつの間にか中に入って見学できるようになりました。ただし、土手に上ることは禁止されています。写真でははっきりとは分かりませんが、実際見るとすごい迫力です。5mほどの土手が三方を取り囲み、閉じ込められた馬のいななきが聞こえてきそうなほどです。

 入り口の碑と説明板によると、この“込”は三つあり、現存しているのが、捕まえたもののまだ若い馬を牧に帰す「払込(はらいごめ)」という施設だそうです。



 捕込の隣の貝柄山公園には、野馬の親子の像があります。現代の人間の親子に大人気のようですが、これが昔いた野馬であることを知る人はあまりいないようです。お父さんらしき人いわく「本物の馬はもっと大きいけどねぇ」。違います。お父さんのイメージしているのは、多分サラブレッドでしょう。日本古来の馬は、この像の通り短足なんです(笑)


■下田の森の土手


 JR常磐線南柏駅から南下した柏市酒井根に「下田(しただ)の森」があります。周りがほぼ宅地化された中に残る森と林で、その一部はビオトープになっています。この野馬土手もそうした緑地帯の一角にあり、東西に伸びています。この辺りでは貴重な自然の中に残る貴重な野馬土手です。


■五香六実の土手 〜都市化の荒波に耐えた野馬土手


 松戸市にあるこの野馬除緑地は、オウル五香店(旧・ダイエー五香店)の脇にある見事な土手です。この五香六実の野馬土手は、JR常磐線南柏駅の近くの野馬土手と並ぶメジャー級の文化遺産です。何度も走ったことがありますので、その存在は知っていましたが、どういうわけか私はその雄姿をきちんと眺めたことがありませんでした。

 改めて訪ねて眺めると、都市化の進んだ五香でよくぞ残った、という感じです。江戸時代に小金牧に入るための木戸の跡地も残っています。松戸市の文化財として保存されるそうなので、この土手の未来は一応安泰のようです。



 五香六実の野馬土手の周りには、昔は一続きであったであろう野馬土手の断片が、あちらこちらに残っています。この土手もその一つ。五香駅のすぐ近くにあります。ご覧のように駐車場や駐輪場の出入り口にするため、土手がスッパリと切り取られていました。

 こういうシチュエーションだと、「なんと無残な」というところでしょうけど、ここまで見事に切り取られていると、なんか逆に面白いです。切り取られた断面を見て、かまぼこを思い浮かべてしまいました(苦笑)。とにかく、このまま残ってほしいです。



 五香駅の近くのこの神社にも、わずかですが野馬土手が残ります。実は、私がPacific-18やMTBのAttitudeXを買った「サイクルサービスおおやま」さんの並びにある金比羅神社なんですが、この裏側に見える盛り土が野馬土手です。この辺りは何度も行っていますが、あの辺りは完全に市街化しています。そこにこんな静かな神社があり、野馬土手が残されているとは、思いっきり驚きました。


■高柳新田 野馬除土手の土手 (中野牧)


 松戸グリーンセンターの「高柳新田 野馬除緑地」の野馬土手です。ここの土手は高さがなく、言われなければ気が付かず、単なる植え込みと思ってしまいそうです。ただ、小金牧と野馬土手をイメージして作られた馬のレリーフはとても存在感があり、なかなか見事です。

 でもですねぇ。このレリーフの馬、サラブレッドなんですよね。青木更吉先生も「小金牧にはこんな馬はいないよ」と著書に書かれていますし、以前受講した野馬土手講座でもぼやいてらっしゃいました。もしこのレリーフが日本古来の馬だったら、さぞや素晴らしかったでしょうね。


■串崎新田を囲む土手


 松戸と鎌ケ谷の市境の野馬土手です。 土手が残っているのは、新京成電鉄くぬぎ山車両基地の西側と東側です。要するに、本来はつながっていた土手が車両基地で分断されたわけで、最初の写真の西側の土手は道に沿って東西方向に、2枚目の写真の東の土手は南北方向に伸びています。

 青木更吉先生の著書「野馬土手は泣いている」によると、江戸時代に小金牧に張り出すように開墾された串崎新田に、野馬が侵 入しないように築かれたようです。確かに、松戸市である串崎新田が半島のように、鎌ケ谷市に突き出していますね。そうすると昔は、串崎新田の北側と東側、 南側の三方を野馬土手が囲んでいたことになります。


■くぬぎ山の土手のかけら


 新京成電鉄くぬぎ山駅の北側の“野馬土手のかけら”です。私のブログ「東葛人的道楽」によくコメントを頂く方から“かけら”の存在を教えていただきました。わずかな盛り土しかなく、まさにかけらです(笑)。“土手”の上には祠が載っています。小金牧時代のくぬぎ山周辺は、将軍様の御馬が引退後に余生を送る御囲(おかこい)のあったところですから、御囲の土手かもしれませんね。


■鎌ケ谷総合病院の土手


 鎌ケ谷総合病院の駐車場に残る野馬土手です。初富の捕込に野馬を追い込むための「追い込み土手」だったようです。200メートル以上の長さの立派な土手が、まさにむき出しの状態で連なっていますので、見ると驚きます。



 この野馬土手をパノラマ写真機能で撮ってみました。まさか野馬土手のパノラマ写真が撮れるとは思いも寄りませんでした。


■北総線新鎌ケ谷駅の西に南北に伸びる土手


 この野馬土手も初富の捕込に続く「追い込み土手」です。北総線新鎌ケ谷駅と北初富駅の間、線路の北側に南北に伸びています。畑の真ん中にあるため近づくことはできませんが、その雄姿は東側と西側にそれぞれ並行して走る道路から眺めることができます。


■鎌ケ谷三中の南に残る土手


 鎌ケ谷市立第三中学校の南、老人ホームの東側の雑木林に残る野馬土手です。この土手は二重土手として残っています。土手の東側は隣接する幼稚園の敷地の中へと伸びていたようですが、面白いことに、今は園児の遊び場となった園内に二重土手の痕跡が残っています。


■初富小学校の裏の小道に残る土手


 鎌ケ谷市の初富小学校の裏の小道に残る野馬土手です。土手は思いのほか保存状態が良く、しかも小道に沿って点々と残っています。それにしても、この小道が凄い。道とも思えないような細さです。これじゃ、地元の方でない限り、なかなか発見できませんね。


■鎌ケ谷市営陸上競技場の西側の土手


 初富小学校の裏の小道に残る野馬土手は北へ伸びていった後、鎌ケ谷自動車学校の南で西に向きを変えています。そして、市営陸上競技場の西側にも、その続きの土手が残っていました。


■稲荷前三差路の南側の土手


 鎌ケ谷市の稲荷前三差路の南側の野馬土手です。この土手も初富小裏の小道の土手とつながっていたようですね。


■南初富の土手


 鎌ケ谷市南初富に残る野馬土手です。新鎌ケ谷方面から南下する道路に面して、土手の断面を見ることができます。


■道野辺八幡の森の土手


 鎌ケ谷市の道野辺八幡神社森の中にある野馬土手です。参道にある「道野辺八幡の森」の標識のところに森へ入る小道があり、そこを行くと見ることができます。最初に見たときは、これが野馬土手かどうか自信がありませんでしたが、今昔マップなどで確認したところ、間違いなく野馬土手のようです


■囃子清水七面堂の野馬土手


 鎌ケ谷市道野辺本町の囃子清水七面堂の野馬土手です。囃子清水七面堂はこの辺りにある小社で、その北側に野馬土手が残っていました。この土手を北へ延ばして行ったところにも、一部土手が残っているようです。



 囃子清水七面堂の西側は深い谷津となっており、湧水が出るそうです。「囃子水公園」という公園になっていますが、小金牧の時代には野馬の水呑み場だった可能性があるそうです。


■鎌ケ谷大仏の近くに残る囲われの土手


 鎌ケ谷大仏のすぐ近くに、こんな野馬土手が残っていました。塀に囲われた雑木林の中にある土手です。塀越しにしか見れないのですが、思いのほか保存状態が良さそうでした。


■鎌ケ谷大仏のすぐそばに残る土手


 鎌ケ谷大仏にさらに近づくと、こんな野馬土手が現存していました。「遺存状態は悪い」と聞いていましたが、なかなか風格です。それにしても、この辺りは自動車の交通量がもの凄いところですが、よくぞ残ったものです。


■白井市内で最も保存状態の良い土手


 白井市冨士に残る土手です。小さな児童公園の中にあり、「白井市の指定文化財」というパンフレットによると、白井市内で最も保存状態の良い野馬土手だそうです。ただし、場所は分かりにくいですので、行かれる方は心して探してください。実はこの土手、昔は南東方向から伸びてきて、鎌ケ谷市の初富小裏の小道の土手に接続していたとのことです。そんなわけで、この土手の南東方向にも野馬土手が残っています。



 それが、この土手です。児童公園の土手を南東方向に延長した線上に、こんな道がありますが、その道に沿って2カ所残っていました。そのうちの1つは、鉄塔の敷地内となっていますので、おそらく壊されることはないでしょう。



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